「そもそも医療保険て必要なんですか?」
私がFP業務をしている中でよく聞かれる質問の一つです。
皆さんの中には、保険の営業マンから勧誘を受けたり一度は”保険に加入した方が良いのかな?”と考えたことがある方がいらっしゃると思います。
今回は元保険の営業マンで、FP資格を持つ私が、そんな質問に対して明確な答えを持てるように、まとめてみました。
・フリーランスエンジニアに医療保険は必要?
・あらためて医療保険のことをちゃんと知りたい!
・自分に医療保険が必要か知りたい
そもそも医療保険てどんなもの?
医療保険には、大きくわけて国民健康保険や健康保険(社会保険)などの「公的医療保険」と、民間の保険会社が提供する「民間の医療保険」の2種類があります。ここでは、民間の医療保険(以下、単に「医療保険」といいます)についての基礎知識や、その加入率について紹介します。
医療保険は、病気やケガに備えるもの。
将来、「入院や手術が必要な大病を患わないか?」という不安を抱く方は多いのではないでしょうか。医療保険は、そんな病気やケガに対する経済的なリスクに備えるものです。
しかし、商品は多種多様で保障内容もさまざま。商品説明を読んでもいまひとつ理解できない、という方もいるかもしれません。でも実は、ポイントさえ押さえればそれほど複雑ではありません。
一般的な医療保険では、「入院給付金」と「手術給付金」をメインに保障しています。まずは、この2つの内容から見ていきましょう。
入院給付金
入院給付金とは、病気やケガの治療のために入院した際に給付されるお金です。基本的に、1日あたりの金額が設定されており、入院日数に応じた給付金が支払われます。
たとえば、「入院1日あたり5,000円」の医療保険に加入していて14日間入院したとすると、受け取れる入院給付金は「5,000円×14日間」で70,000円となります。
入院給付金の計算式
入院給付金 = 1日あたりの給付金額 × 入院期間(日数)
また、入院日数に応じた給付金が支払われるのではなく、入院するとまとまった一時金が受け取れる「入院一時金」タイプの保険商品もあります。いずれの場合も入院給付金が支払われる要件には、「日帰り入院から」「1泊2日以上の入院から」など、商品によって異なります。
手術給付金
手術給付金とは、病気やケガの治療のために手術を受けた際に給付されるお金です。一般的に「1日あたりの入院給付金×約款所定の給付倍率」で給付額が決まりますが、手術の種類によって給付倍率が変わる商品もあれば、手術を受けたのが入院か外来かで給付倍率が変わる商品も存在します。
たとえば「入院給付金が1日あたり5,000円、手術給付金が入院給付金の20倍」の医療保険に加入していた場合、手術を受けた際に支払われる給付金は「5,000円×20」で100,000円になります。
医療保険の加入率
日本では、「国民皆保険(こくみんかいほけん)」といって、国民健康保険などの公的医療保険に原則としてすべての国民が加入します。
しかし、民間の医療保険は、加入する・しないは任意。本人の意志で決められます。このため、「そもそも、医療保険は必要? 不要?」という疑問がつきまといがちです。そこで、医療保険の必要性を考えるうえで参考になるデータとして、どれだけの人が医療保険に加入しているのか、調べてみました。
生命保険商品(個人年金保険等を含む)で医療保障に備えている人の割合は、88%以上に達しています。およそ10人に8人が生命保険商品で医療保障を備えているというデータからすると、やはり医療保障として代表的な商品である医療保険に加入する方が一般的 といえるでしょう。
https://www.jili.or.jp/press/2018/pdf/h30_zenkoku.pdf
生命保険文化センター(平成30年度「生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」)より
公的医療保険から考える保険の必要性
日本では「国民皆保険制度」のもと、すべての人が健康保険や共済組合、国民健康保険といった公的医療保険制度に加入しています。これにより、病気やケガで治療を受けた際には、公的医療保険で医療費の一部がカバーされます。自己負担する医療費の割合は年齢や所得によって異なりますが、もっとも高い場合でも3割程度の負担です。
高額療養費制度
とはいえ、もし仮に大きな病気をした時は3割負担とはいえ、負担額はかなりのものになるのでは?とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな時に使える制度として、ある一定の自己負担の上限(限度額)を超えた医療費を給付してくれる、「高額療養費制度」というものが設けられています。
この制度は年収ベースに定めらえた「自己負担限度額」に応じて、医療費が高額になった場合でも、実負担額が抑えられる制度で、また「自己負担限度額」は、年齢や所得に応じて決められています。
私たちは国民皆保険制度のもと、誰もが何かしらの公的医療保険に加入しているので、この制度の対象となっています。
たとえば、70歳未満で、年収が約370万円〜770万円(自己負担3割)の人の場合、総医療費が100万円であれば、1ヵ月の自己負担限度額は87,430円。病院の窓口で医療費を30万円支払ったとしても、申請することで後日、限度額の87,430円を超えた分の212,570円が支給されるため、実際の自己負担額は抑えられることになります。
高額療養費で適用されない費用
高額療養費制度はとても素晴らしい制度ではありますが、この制度があるから全て安心というわけではありません。
注意すべきは、入院などにかかる費用すべてに適用されるわけではないことです。
たとえば、いわゆる「入院時の差額ベッド代」には適用されません。差額ベッド代とは、たくさんのベッドがある大部屋ではなく、個室など「特別な療養環境」を希望した際にかかる費用のことです。
差額ベッド代が発生する病室の要件は「一病室の病床数は4床以下であること」などと定められています。差額ベッド代が必要になるのは個室ばかりとは限らず、4人部屋でも仕切りや専用の収納スペースがあり規定を満たしていれば、差額ベッド代がかかるのです。
そのほか「入院時の食事代の一部負担」、「先進医療の技術料」、そして通院時の交通費も高額療養費制度の適用対象外なので、全額を負担しなければなりません。
保険が必要かどうかの考え方
ここまで話を進めると「結局いるのか要らないのか分からない、、、」と頭がショートしてしまう人もいるかもしれません。
そこでここでちょっと、立ち止まって考えてみたいと思います。そもそも保険とは何のために加入するのでしょう?
病気になった時のリスク。つまり病気になった時に掛かるお金の問題の解決策の一つなのです。そう考えると、仮に病気をした時に貯蓄が十分にある人であれば医療保険は必要ありません。しかし近年、特に若い人の中には貯蓄が十分に出来ていない方も多いのではないでしょうか?もしそんな時に大きな病気をする可能性をリスクと捉えるのなら、医療保険は必要になってくるでしょう。
まとめ
つまり医療保険が必要なのか?という疑問に対しての答えは、「その人の状況やリスクに対しての考え方による」という事なのです。
例えば、預貯金やすぐに現金に変えられるような資産をお持ちの方であれば、わざわざ医療保険に加入しなくても、お金が必要になった時には、預貯金や資産を切り崩す事が出来るでしょう。しかし仮に、預貯金も資産もないような状況であれば、万が一のリスクを考慮して、民間医療保険に加入する意味もあるかもしれません。また預貯金や資産があったとしても、そのお金に手を付けたくないのであれば、医療保険に加入して万が一に備えるという考え方もあるかもしれません。
取り留めない回答になってしまいますが、公的医療保険の制度でカバー出来ないリスクや、今の自分の経済状況や考え方と照らし合わせて、医療保険に加入すべきかの判断を行う事が大切だと思います。
私個人としては、国の公的医療保険の適用外で、想定されるリスクをカバーする意味では、必要最低限の生命保険はあってもよいのではないかと思います。
以上、今日のコラムでした。